星空

「冷えてねえか?」

 

 

 

 

 

しばらく夜空を見上げていたそーちゃんが

 

少し視線を私にずらした。

 

 

 

 

 

 

「うん。大丈夫だけどそーちゃんは?一緒に毛布に入る?」

 

 

「いや、そろそろ行くか?」

 

 

 

 

 

 

 

頭上に瞬く星空は変わらずに輝いてるけど

 

流れ星のピークは終わったのか

 

心なしかその数は少なくなっている気がする。

 

 

 

 

 

 

 

「ステキな所に連れて来てくれてどうもありがとう」

 

 

 

 

 

 

帰りの車でそう言えば、

 

私の言葉に照れたのか

 

少しぶっきらぼうに“寝とけ”と

 

掛けていた毛布を頭まで掛けられた。

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「お初にお目に掛かります。橋本組の若姐を勤めさせて頂いております、百合と申します」

 

 

 

 

 

 

 

なぜかセーラー服を着て

 

ドスの利いた声で

 

まーくんの奥さんに

 

深々とお辞儀をされている私。

 

 

 

 

 

 

百合さんの横には相変わらず

 

浪人生のような恰好のまーくんが

 

ニコニコと笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、私は本城樹里と申します。みなさんにはシロと呼んでもらってます。宜しくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

同じように深々と頭を下げさせてもらっている。

 

 

 

 

 

まだ自分を本城と言うのは照れくさいけど

 

白石より100倍良い。

 

 

 

 

 

 

 

丁寧な挨拶を終えた後

 

やっぱり堅気と呼ばれる私たちに

 

迷惑にならないように

 

二人で変装してクリスマスパーティーに

 

来てくれたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

百合さんはセーラー服にノリノリだったようで、

 

嬉々として変装したらしいけど。

 

 

 

 

 

百合さんのお腹にはまだ目立たないけど

 

赤ちゃんがいるらしくて

 

今日は、蓮くんとお腹の赤ちゃんのために

 

リビングは禁煙になった。

 

 

 

 

 

 

 

タバコを吸いたい人は、無駄に広いお庭で吸うらしい。

 

武ちゃんの彼女さんは

 

今日は来れないみたいで残念だけど

 

今夜はみんながそーちゃんの家に

 

集まってくれている。

 

 

 

 

 

 

和香さんも百合さんに会うのは初めてみたいで

 

同じように深々と挨拶をして

 

楽しそうに主婦トークを繰り広げている。

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれ料理をつまみながら

 

お酒を飲んで楽しそうに過ごしている中

 

私はみんなにお礼を伝えた。

 

 

 

 

 

「あのっ!!」

 

 

 

 

 

 

私が声を張り上げた瞬間に

 

蓮くん以外のみんなの視線が

 

一瞬にして私に集まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度は、私のためにいっぱいのご協力ありがとうございました!!無事に本城樹里になれて、あの人たちと縁を切る事が出来ました。

 

 

これも、全部みなさんのおかげです!!本当にありがとうございます。

 

 

まーくんにはジョーさんから一番必要な資料を貰う手配をしてもらえて、陽太さんには私がここにいれるように法律に背かないように手配してくれて、それで月下のみんなには直接私を探す悪鬼を解散させてもらって、浩介さんは花梨の様子を教えてくれて、和香さんはいつでも面白い話で私の気持ちを紛らわせてくれて、そーちゃんはいつもいつも私を支えてくれて、偽造とは言え奥さんにまでしてくれて保護者になってくれて……

 

 

本当にありがとうございました。そして百合さんはこれからも宜しくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

私が頭を下げ続けていると

 

いつの間にかそーちゃんが私の横に来たみたいで

 

クシャリと私の頭が撫でられ

 

聞きなれた声が横から聞こえた。

 

「本当に、感謝しかねえよ。現役から退いて長えし、それぞれの仕事もあるのに優先してコイツの事をやってくれたの分かってる。それに現役の仕切りは見事だった。お前たちがいなかったらこんなに上手くいかなかたったよ。コイツのために世話になった。ありがとな。」

 

 

 

 

ちらりと横を見れば

 

同じように頭を下げているそーちゃんがいて。

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも頭上げろよなっ!!今日はクリスマス会とそーちゃんとシロちゃんの結婚祝いなんだからさっ」

 

 

 

 

 

 

いつも通りの陽気な声を掛けてくれた

 

浩介さんの言葉に誘導されるように頭を上げれば

 

まーくん、百合さん、陽太さん、和香さんは

 

私たちを見守るように

 

ニコニコと笑顔を向けてくれていて

 

月下の三人組は瞳を潤ませて

 

そーちゃんを見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はよー、お前のとっておきのワイン開けちまおうと思って来たんだからなっ」

 

 

 

 

まーくんは、そう言いながら

 

そーちゃんの肩を組んで

 

お酒の入ってるボックスを指差している。

 

 

 

 

 

「分かってるって。あれだろ?」

 

 

 

 

 

珍しくそーちゃんも上機嫌にまーくんに答えて

 

お酒の入ってるボックスに

 

横たわっていたワインをみんなに出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇシロちゃん、あのワインなんだか知ってる?」

 

 

 

 

 

 

横に来た陽太さんに聞かれるけど

 

私にはなんのことだか分からない。