愛されている

「お姉さん大好きなのね。で、私が何を言いたいかというと、シロちゃんは十分に頑張ったわ。」

 

 

「みんなのおかげです。私一人だったら何も出来なかったから」

 

 

「ふふ。そんな風に思ってくれるからうちの人も他のみんなも協力したかったんだと思うよ。」

 

 

 

 

 

百合さんと話込んでいると、

 

和香さんが蓮くんを抱っこして連れて来てくれた。

 

 

 

 

 

 

「シロちゃん、4月から高校に行く事にしたんだね」

 

 

「はい。通信か高卒認定で良いって言ったんですけど、そーちゃんが絶対に高校に編入しろって」

 

 

「あははは。聡介もマサも自分達は全然高校に通ってないくせに、良く言うよね」

 

 

 

 

 

面白そうに和香さんが笑うと

 

腕の中の連くんも振動で小さく揺れている。

 

 

 

 

 

 

「そうだったんだ!今度、私にもマサの高校の話聞かせて!特に恥ずかしい話とか。弱みを掴んでやるのよ」

 

 

 

 

 

百合さんが和香さんに

 

悪そうな笑みを浮かべて聞いている。

 

 

 

 

 

 

「もちろん!!もう恥ずかしい話ばっかだから、今度はメモ持って来て!!」

 

 

「楽しみっ!!」

 

 

 

どうやら、二人はノリノリだ。

 

 

 

 

 

「で、シロちゃんにはクリスマスプレゼントで一個教えてあげる」
「ん?なんですか?」

 

 

「聡介はシロちゃんに高校生として色んな経験をしてほしいんだって。友達と遊んだり、部活したり、バイトして好きなもの買ったりとかさ。普通の高校生が普通にやってる事を、シロちゃんにやってもらいたいと思ってるんだよ」

 

 

「愛されてるわね〜」

 

 

 

 

 

瞳をキラキラさせながら

 

和香さんの話に相槌を打つ百合さん。

 

 

 

 

 

 

 

「それって、そーちゃんが言ったんですか?」

 

 

 

 

 

私が通信か高卒認定で良いって言った時

 

“とにかく行け”としか言われなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んーん。そこまで詳しくは言ってないよ。なんだっけ?“高校くらいちゃんと出ねえとヤバいだろ”とかそれくらいだけど、私と浩介はそう解釈したの。だって通信だって高卒認定だって、最後もらう物は同じな訳じゃない。」

 

 

「そっかそっか!!シロちゃん前の学校でほとんど友達と遊べなかったんでしょ?だからおもいっきり遊んだ方がいいわ。その時にしか経験できない事っていっぱいあるんだから、いっぱい経験するのよ」

 

 

 

 

そーちゃんの分かりづらい優しさに

 

心が温かくなっていく。

 

 

 

 

二人の言葉に4月から始まるであろう

 

新生活が楽しみになって来た。

 

 

 

 

 

 

友達出来るかな?

 

都会の高校生は放課後何するのかな?

 

編入するのはどんな高校なんだろう、と胸が躍る。

 

「じゃあ今日はありがとなっ!!ご馳走様!!シロちゃんもプレゼントありがとなっ!!」

 

 

 

 

 

 

まーくんが言うとそれが号令かのように

 

みんながぞろぞろとマンションを後にした。

 

 

 

 

 

さっきまではワイワイとしていたリビングが

 

一気に静寂に包まれる。

 

 

 

 

 

 

生ごみをディスポーサーで分解して

 

お皿やグラスを食洗器に入れて

 

食洗器に入らない大皿を手で洗っていると

 

お風呂から出てきたそーちゃんが

 

髪を濡らしたままリビングに入って来た。

 

 

 

 

 

 

 

「疲れてねえか」

 

 

 

 

 

 

髪を拭きながら、ソファに座り後片付けをしている私を気遣ってくれる。

 

 

 

 

 

 

「ううん。楽しかったね」

 

 

「そうだな。」

 

 

「みんなからのプレゼントもすごい嬉しかったの」

 

 

 

 

 

みんなからってグレーのムートンブーツを貰った。

 

 

 

 

 

 

 

前に蓮くんの出産祝いを買ったデパートで

 

いいなって思って見ていたお品。

 

 

 

 

 

 

ふくらはぎ丈でも30000円くらいするもので

 

とてもじゃないけど買えないなと思っていたものだった。
「大事に…すっごい大事に履くよ」

 

 

「あぁ」

 

 

「そーちゃん、先に寝てて。私も片付けてお風呂に入ったら寝るから」

 

 

 

 

 

スマホを手にした日から

 

私とそーちゃんは別々に寝るようになった。

 

 

 

 

 

 

悪鬼が探さなくなって

 

親が私と縁を切りたいと望んで

 

私が逃げないと分かったのか

 

そーちゃんからそう提案された。

 

 

 

 

 

 

 

寂しくないって言ったら

 

それは嘘でしかないけど

 

それでも男女の仲でない私たちが

 

別々に寝るのは当たり前だから。

 

 

 

 

 

 

「じゃあな」

 

 

「おやすみ」

 

 

 

 

 

寝る前の挨拶をすると、そーちゃんは自室に入るためにリビングを出て行った。