新しい生活への想い

「……俺じゃねえ」

 

 

 

 

 

少し照れたように言葉を吐き出して

 

プイっと横を向いた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあサンタさんが私に来てくれたの?」

 

 

「それ以外ねえだろ」

 

 

 

 

 

そーちゃん、私はそこまで純粋なタイプではないのよ。

 

 

 

 

17歳にしてサンタさんを信じてても

 

それはかなりイタイ子なのだと思うけど

 

そーちゃんがそう言うなら、きっとそういう事だ。

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでは頭の中は

 

キスの事でいっぱいだったのに

 

今は朝起きた時に枕元に置いてあった

 

プレゼントの事で興奮している。

 

 

 

 

 

 

 

「そっか!そっか!!サンタさんかぁ!!」

 

 

「良かったな」

 

 

「うん!!すっごい嬉しいよ!!」

 

 

 

 

 

 

そんな興奮している私の頭の上に

 

そーちゃんの温かい手がポンと置かれた。
「私ね、こういうの初めて。もちろんサンタさんなんてずっと来てくれなかったし、こうキラキラした物もピアス一つ持ってるだけで、それ以外は初めてなんだ」

 

 

 

 

 

サンタさんからのクリスマスプレゼントは

 

ゴールドの細いチェーンに

 

丸い小さなダイヤが付いているネックレス。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、絶対に大事にするから。ありがとそーちゃん!!」

 

 

「だから俺じゃねえ」

 

 

「そうかもだけど、ありがとうって誰かに伝えたくて目の前にそーちゃんがいるからそーちゃんに言ってるだけ」

 

 

「そうかよ」

 

 

 

 

 

 

 

かたくなに自分じゃないと否定するけど

 

現実的に夜、この家に入って来た人はいないはず。

 

 

 

 

 

 

 

だから、このクリスマスの朝に発見できるように

 

私の枕元に置いてくれたのはそーちゃんなんだと

 

私は知ってる。

 

 

 

 

 

 

ありがと、そーちゃん。

 

 

 

大切にするよ。

 

 

 

 

 

……さっきのキスは私からのお礼という事で。

 

 

 

 

いや、お礼にもならないか。

 

 

 

まぁ、そーちゃんが無かった事にしたいと言うなら

 

無かった事にしたのが私からのお礼だという事にしよう、うん。そうしよう。
すやすや眠る蓮くんを横目に

 

和香さんと二人で昨日作って冷やして食べ頃になった

 

プリンを頬張っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

季節は流れ早いもので2月になっている。

 

 

 

 

 

 

 

須賀家でのアルバイト期間も

 

今月末で半年の約束が終わるから

 

来月からは新しいアルバイトを

 

探さないといけない。

 

 

 

 

 

 

人妻になった私を受け入れてくれる高校は少なくて

 

旬くんたちが通うここから電車で30分以上はかかる

 

都立高校の編入試験を受けて

 

先週、4月から高校二年生として

 

編入していいと連絡をもらったところ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも風紀を乱さないために

 

結婚している事は絶対にばれないように、

 

との条件付きで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月下旬の編入試験の後には

 

月下のたまり場に招待してもらった。

 

 

 

 

 

 

4月から私が通う予定の高校には

 

月下の人たちが何人かいるみたいで嬉しい限り。

 

 

 

思った以上に若い子が多いなと思い

 

優太くんに聞いたら

 

 

”大体、悪くなるのは中学生の時だからね。だからここに居るのは引越しとかの事情がない限り、ほぼ中学の時からここにいる奴等だけ”

 

 

と教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

そのたまり場で聞いた話によると

 

悪鬼の凄腕ハッカーは

 

なんと夏休み前に告白してくれた

 

高城先輩だったらしい。
あの家出した日に大荷物を持って

 

切羽詰まった顔で電車に乗る私を見ていて

 

新学期になって留学したと聞き、

 

何かおかしいと思って調べていた所

 

私が悪鬼に探されていることが分かり、

 

それを邪魔するために悪鬼に入り

 

龍神に分かるように証拠を残しながら

 

私を中から守ってくれていたと

 

優太くんが教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

その場で優太くんに電話を貸してもらって

 

高城先輩に電話も掛けてもらい

 

何度もお礼を言っていたら

 

「好きな子を守れて良かったよ」と

 

何とも男前な事を言われ、

 

少しドキッとしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな風に私も誰かを好きになる事なんてあるのかなと

 

これから始まる新しい生活に想いを巡らせていると

 

和香さんの陽気な声が鼓膜を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、聡介から職業聞いたんでしょ!!」

 

 

 

私の両手を握り締めながら

 

キラキラとした眼差しを向けてくれている。

 

 

 

 

 

 

そーちゃんから、職業を私に明かしたって聞いたのかな?

 

 

 

 

 

「でもホラー小説は怖くて読めないから残念です!!」

 

 

「あはは。ホラー小説って言われたんだ!そっかそっか!!でも、小説家って明かしただけでも大進歩なんだよ」

 

 

「そうなんですか?」